私は仕事柄、服地の買い付けや企画の打ち合わせ等でヨーロッパや国内の産地へ出張に行く機会が多いのですが、今回は今年の2月末から3月にかけて行ったヨーロッパ出張について報告したいと思います。 その前に、ヨーロッパの服地の主な産地を簡単に紹介したいと思います。 ヨーロッパにおける紳士服地の2大産地は、イギリスのハダースフィールドとイタリアのビエラです。共に服地の産地には不可欠な美しい水に恵まれた、素晴らしい自然を有するところです。ちなみに、日本国内の一大産地である尾州(愛知県の一ノ宮付近)も、木曽川や長良川に代表される大小多くの川に囲まれた地域です。 それでは本題に入りましょう。 今回私が最初に訪問したのは、イギリスのハダースフィールドです。弊社が企画しているダンヒルやチェスターバリーをはじめ、高級品といわれている服地を生産しているメーカーが集中しています。 今回の出張の目的は、2006年の春夏物の企画収集と買い付けですが、一部の商品に関しては、三ヶ月ほど前にあらかじめこちら側から出しておいたアイデアに基づいて、メーカーに作らせた試作品から買い付けることもしました。 アイデアを出す作業は非常に手間のかかることなのですが、オリジナル性を追求するためには不可欠なことなのです。また直接メーカーを訪問するので前回に発注した商品の仕上がり具合のチェックなどもできるのです。
今回も、2005年秋冬のチェスターバリーを織っている途中の工程を、チェックしてきました。 ベテランの職人が手間隙かけて生産している現場に立ち会うことができて安心するとともに、その商品をお客様にお届けする日がとてもたのしみになりました。 今回の滞在中にハダースフィールドのメーカーの方とじっくりお話をする機会がありましたが、彼らにとって日本のマーケットは非常に重要なので、今の日本の経済状態がとても気になるようです。 英国製の素晴らしい服地を日本の皆様に紹介していかなければならないという使命を産地を訪れるたびに実感します。
先程、イタリアの紳士服地の産地はビエラというところだと申し上げましたが、一年に二回(3月と9月)スイスとの国境に近い、コモ湖というイタリア有数のリゾート地にある展示会場で「イデアビエラ」という、ビエラ地区にある紳士服地メーカーが一同に集まって、世界中のバイヤーを招待して開催する展示会があるのです。 ゼニア、ロロピアーナなど約60件ものメーカーが、それぞれのコレクションを発表するいわば紳士服地のトレンド発信基地です。 ファミリーで何代も続いているメーカーも多く、ハダースフィールドと同じく、歴史と伝統に基づく確かな物作りをしています。 今回の2006年春夏物コレクションも、斬新でトレンドに敏感な内容を見ることが出来ました。 また、この展示会の昼食なんですが、現地の料理人を期間中会場に呼んで、料理を作らせるのですが、これがまた旨いんですよ! 前菜からパスタ、メインも肉と魚と両方ですし、デザートから赤白のワインまでと盛りだくさん(しかも食べ放題でタダなんです)。ついつい食べ過ぎて午後の仕事が辛くなったりしています。さすがイタリアですね。 ところが、とても残念なことなのですが、このイデアビエラ展示会が今回で最後になってしまったのです。私も業界の者としてとても寂しく思いますが、次回からは形を変えて、ビエラ以外のメーカーやレディス、シャツと共催になるという話です。 ここまで簡単に、ヨーロッパにおける紳士服地の2大産地でのワークの話をしてきましたが、それ以外にもヨーロッパには、スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガルや東ヨーロッパ、トルコと多くの産地が存在しています。しかし最近では、安い中国製の服地に押されて苦戦を強いられているところも少なくなく、日本も同じです。 今後も、長い歴史に培われた感性と品質を持つヨーロッパの服地を、皆様に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 |