札幌店の三上です。
初めて書かせていただきます。何を書くか考えていましたが、我が青春のゴダールについて語らせていただきたいと思います。
J.L.ゴダールは、フランス映画史上において60年代に波及したヌーヴェルヴァーグ(新しい波)の旗手と呼ばれ、鬼才の名を欲しいままにした映画監督です。別にフランス映画だなんて格好つけるわけじゃないですが、従来の映画の「こういうものだ」「こうあるべきだ」という枠組みに一切縛られず、自由で勝ってきままなような演出や物語展開が好きなだけです。若い頃、そういうものに心酔する時期はありますし、またあの頃の時代の雰囲気を反映していたと思います。
なかでも65年に発表された「気狂いピエロ」は代表作として語られることも多い傑作です。私が目にしたのはかなり後で、場末の映画館で初めて見たゴダール映画でしたが、こんな映画が世の中にあるんだと驚いた記憶があります。
ストーリーは単純なのですが、ところどころに散りばめられた抽象的な言葉の引用やカメラワーク、そしてアンナカリーナの美しさは衝撃的でした。破滅に向かってまっしぐらの逃避行、ジャンポールベルモンド演じる主人公の支離滅裂な生き様は、まさに刹那的な青春のイメージそのものでした。
最後のシーン、主人公がダイナマイト炸裂で自殺した後、美しい南仏の海を背景に流れるランボーの詩、
「見つかった!何が?永遠が、海と溶け合う太陽が」
意味も明解にわからずとも、頭を打ち抜かれたような気分になって映画館をあとにした記憶があります。
それからというもの、ゴダールの映画を見まくることになりました。そしてしばらくして70年代後半、YMOが大ヒットしましたけど、そのファーストアルバムを目にした時には、これまた驚きました。ゴダールの映画のタイトルが使われている曲が三つもあったのですから。
何かのラジオ番組で坂本○一や高○幸弘が、俺は「気狂いピエロ」を映画館で16回見た、いや俺は17回だ、他の何々は・・・とやっているのを聞いて納得しました。私も彼らとほぼ同年代であり、同じ雰囲気を味わっていたんだと。そう思えると単なるヒットメーカーという印象だったのが、急に親近感を抱いたのでありました。
ちなみにファーストに収録されている曲のタイトルは「マッドピエロ」です。